meetup-5
「ハンズオンショーケース:テクノロジーを使ったアート・エンタメ表現のプロトタイプ共有会
2025年11月23日、日本VR学会A+E研究委員会が主催するMeetup-5「ハンズオンショーケース:テクノロジーを使ったアート・エンタメ表現のプロトタイプ共有会」が、東京大学情報学環オープンスタジオとオンラインのハイブリッドで開催された。
5回目の開催となるMeetup-5では、参加者が持ち寄った作品や研究のプロトタイプを、展示・デモンストレーション形式で共有・議論し、各自の研究や表現の可能性を広げる場として設けられ、前半に講演、後半にデモ会+交流会が行われた。


本イベントの講演者として、東京理科大学の佐々木智也氏と、アブストラクトエンジンの竹森達也氏が登壇し、それぞれの活動におけるプロトタイピングや展示についての事例や考え方についてご講演された。
まず佐々木氏から、「体験を壊さないための工夫」という題目でデモを動かし続けるための工夫についてご講演いただいた。具体的にデモが動かなくなる3つのケースが挙げられた。
1つ目に「研究室では動いていたが動かなくなった」対策として、運搬中の故障(振動や衝撃)を防ぐため、機材をパッキングするとともに、ケースの中を絶対動かないよう充填することが紹介された。
2つ目に「最初は動いてたが何人かしたら動かなくなった」対策として、事前の動作確認は少なくとも2人でやり、自分以外でも試すということ、また、開発者が思うよりも速く・強く・激しく動かす想定をすることなどが紹介された。
3つ目に「デバイスが壊れたので何もできなくなった」対策として、装置を展示用+交換用+修理用部品の合計2.5個用意することが紹介された。また、複数の見せ方を用意しておき体験の内容を段階的に落とすことで、一部の機能が動かなくてもコアの部分は体験できるようにすることや、デバイスが完全に動作しないときでも動画を用意しておくなど、何かしらは見せ続けることの重要性が共有された。
続いて、竹森氏より、ご自身がこれまでに制作してこられた作品についてご講演いただいた。学生時代の個人ロボコン、蛇型ロボット、レスキューロボットから、アブストラクトエンジン以降の動く翼、オブジェクトを浮遊させる見えない糸、足が地面についてない移動ロボットUNI-ONE、イマーシブ体験のSynなどである。
講演の中で特に、『「プロトタイプ」について思うこと』という内容について非常に共感を覚えた。とにかく作ってみて、想像してたよりグッときた/別にグッとこないという勘を掴むということ、シミュレーションも立派なプロトタイプであり、今構想しているものが100%うまくいった場合にどうなれるかを見られるということ、必ずしも自分で作らなくてもよく、「あるものは買え、ないものは作れ」の精神で時間を大事にすること、体験は言葉を超えて共有できるため、コラボレーションにおける共通言語としても重要であるということなどである。


その後、質疑応答の時間が設けられた。まず、A+E研究委員会委員長の山岡潤一氏から玄人向けの展示故障対策の質問があり、会場に3Dプリンタを持ち込むなどが話題に上った。派生して語られた、小道具を持っていくか現地で調達するかの勘所について、特に海外だとその国のものかによって感じ方が違うという話が興味深かった。
会場からも多くの質問が集まった。
例えば、制作後にどこに出し、どこで体験してもらうかという質問に対し、竹森氏からは辛抱強く色々な人に見せ続ければいつかチャンスがくるという回答がなされた。
また、機能を突き詰めるフェーズと展示を突き詰めるフェーズの切り替えについて、つい機能の方をやりすぎてしまうことへの対策についての質問に対しては、佐々木氏からは一人でやらないという回答があり、竹森氏からはコアの実装は絶対に押さえてから作り込みをする、展示としては通るとなれば安心して機能の追求もできるという回答があった。
後半のデモ会+交流会では、参加者が持ち寄った制作物が全9つのブースで展示され、作品を囲んで相互にフィードバックしながらの歓談が行われた。制作物は学生の作品から研究会委員や講演者まで、幅広く集まった。アクティブシャッタにより影が立体となる竹森氏の作品など、興味深い作品が並び、更なる発展性についてなどの活発な議論が行われた。実際にデモを体験しながら議論が行われることにより、非常に有意義な時間であった。










本イベントでは、第一線で活躍する研究者やアーティストから制作や表現における工夫や視点について共有されるとともに、実際に参加者が持ち寄った作品が展示・デモンストレーション形式で共有され、相互のフィードバックがなされた。研究や制作を進めるフェーズと展示をするフェーズの両方で新たなヒントを得るきっかけに満ちていた。今後、参加者が本イベントで得た知見によって、各自の研究や表現の可能性が広がることが期待される。
開催日時:
2025年11月23日(日) 13:00-17:00
主催者:
日本VR学会A+E研究委員会
参加者の属性、参加人数:
大学生・大学院生、大学関係者、企業関係者 32名(うち現地参加者27名)